全盲の中で人生の美を追求する、Dominique Moody のトレーラー「NOMAD」
通りすがりドライバーにイイネ! とサムズアップされ、自作のモバイルハウスの前で弾ける笑顔。廃材を利用した「NOMAD」に暮らすLA在住のアーティストDominique Moodyは、その魔法で何度だって人を驚かせる。
小さな頃からずっと”ノマド”だった
自身のモバイルハウスの名前にもなっている「ノマド」は、単なるシンボルの話ではない。計9人の兄弟達と、収入の不安定な両親のもとに育てられたMoodyは、生活の困窮のため常に「ノマド的に」生きてきた。放置された質の悪い家々を転々としながら暮らす子供時代に、クラスメートに自分の境遇をポジティブに説明するために思いついた単語が「ノマド」だ。もともとは、特定の場所に腰を据えない、遊牧民を意味する。
「誰か不用品」を集めてかけた魔法
成長したMoodyはブルックリン、サンフランシスコとさまざまな場所を転々としながらアートを学んでいく。そして、3年間の格闘の末、廃材のみを使用して生まれたのがこの小さなモバイルハウスだ。
「『私のクローゼットよりも小さいわ』なんて、よく言われるんです」と笑うMoody。彼女の生活を見ていると、大切なのはサイズではないことがよく分かる。捨てられた洗濯機のドアを使った潜水艦のような窓からひょこっと出てくるMoodyの笑顔に、こちらもつられて笑いたくなってしまう。
実はMoody、「NOMAD」完成後の現在はほぼ全盲だ。「NOMAD」外観のラスティック模様は、そんな状況の中で描かれた。アーティストにとって決定的な視力をほぼ失い、自分でハウスを運転することもままならない中で、Moodyの挑戦は続く。「Seeing the beauty in the broken(壊れたものの中に美を見出すこと)」は、不要になったものの中に価値を見出したり、暗くなってしまった視界のなかからそれでも価値のあるものを救い出したりする、Moodyの教訓だ。
カラフル模様のモバイルハウスとそこから覗く弾ける笑顔は、「本物のノマド」による人生の美ではないだろうか。